【ラピュタ】店前でうずくまる老人を誰も助けない…パズーの住むスラッグ渓谷は実は相当ヤバい状態だったんです。
スラッグ渓谷──その名は、かつての繁栄を思わせる響きを持つが、今や陰りを帯びた場所だ。天空の城ラピュタの主人公パズーが暮らすこの町では、街角でうずくまる老人たちの姿が目に入る。そんな光景は、宮崎駿の描く華やかな世界とはかけ離れた現実を映し出している。かつて炭鉱で栄えたこの地は、今や人々の心を蝕む貧困と失望に満ちている。
スラッグ渓谷の深い谷底には、かつての繁栄を象徴するはずの工場や店が姿を消し、無惨に朽ち果てている。主人公パズーの目に映るのは、かつての賑わいを思い起こさせる景色ではなく、忘れ去られた無数のボタ山と、そこに住む人々の無関心だ。彼が目撃した落下する少女を助けるために走り去る姿は、彼自身がこの町の未来を背負う覚悟を示している。
この町の衰退の原因は、炭鉱資源の枯渇や、鉄道の発展によるコスト高だけではない。人々の心の中にも、かつての栄光を忘れ去り、助け合う精神が消え去ってしまったのだ。商店の明かりが灯る中で、誰もが素通りしてしまう現実。それは、スラッグ渓谷が持つ悲劇の象徴とも言える。
パズーの住むスラッグ渓谷は、ただの鉱山町ではなく、その背後には人間の営みのむなしさが潜んでいる。彼が目指す未来は、この町の希望となるのか。それとも、さらなる暗黒の中に飲み込まれてしまうのか。スラッグ渓谷の物語は、私たちに問いかける。「あなたは、何を選ぶのか?」