日米で物議!「なぜ今永昇太は大谷翔平斬りの無安打で4回に交代したのか」とシカゴ地元局も焦点…交代裏目の逆転負けでも指揮官「70球メド」説明に理解を示す声も

メジャーリーグ開幕戦が18日、東京ドームで行われ、ドジャースがカブスに4-1で逆転勝利した。カブスの先発の今永昇太(31)は大谷翔平(30)を2打席凡退に抑えるなど4回を無安打無失点に抑える好投を見せたが、69球で降板した直後の5回に逆転を許すなど交代が裏目に出た。試合後にクレイグ・カウンセル監督(54)は「70球がメド。4回がそのタイミング」と説明したが、米地元メディアもこの問題を取り上げるなど、メジャー式の采配が日米で物議を醸した。

4万2000人を超えるファンで埋まった東京ドームがざわついた。カブス1-0のリードで迎えた5回だ。カウンセル監督が、ノーヒット投球を続けていた今永が勝利投手の権限を得る直前にベン・ブラウンへの交代を告げたのだ。「山本投手が相手なので、1点を取られたら彼は波に乗ってくる。点を与えると相手に流れがいく。いつもは失点も計算しながらマウンドに上がるが、今日は無失点というものにかなりフォーカスした」

“投げる哲学者”の今永は、そのプラン通りにここまでノーヒット投球を続けていた。「久々に緊張した」という大谷に対しても高めのゾーンを有効的に使い、セカンドゴロ、セカンドライナーと、2打席封じ込めていた。 無失点にこだわったため、計4四球を与えるなど、球数を使ってしまったこともあり、4回終了時点で69球だった。

カウンセル監督の采配は裏目に出た。ブラウンは一死からアンディ・パヘスに四球を与えると、大谷にライト前ヒットでつながれ、一、三塁からトミー・エドマンに同点タイムリー、さらにテオスカー・ヘルナンデスの三塁ゴロで、併殺を狙った二塁手が一塁へ悪送球をする間に、大谷が逆転ホームを駆け抜けた。続くウィル・スミスのタイムリーまで飛び出して1-3とリードを許してしまった。その後、反撃もできず1-4で敗れることになった。

複数の米メディアが動画で報じた試合後の公式会見によると、カウンセル監督は、今永を「大変良かった。安打を許さず、ドジャースの打者の打球も弱いものが多かった。四球はあったが、走者をうまくかわした。ドジャースのアプローチにより、ファウルで粘って球数は投げさせられたがその中でもよかった」と称賛した上で交代理由についてこう説明した。「70球をある程度のメドにしていた。山本選手も共にそれくらいで降板している。4回がそのタイミングだと判断した」 カウンセル監督は、4回に今永が2つの四球を出して球数が70球に近づいてくると何度もブルペンに電話をかけていた。

カウンセル監督が指摘するようにドジャースの山本も5回72球で降板した。 中4日、中5日でローテーを回すメジャーリーグでは、球数での先発投手の降板は常識で、しかも、まだフィジカルは完全に出来上がっていないシーズンの最初で通常より2週間ほど時期が早い。162試合を戦う長いペナントレースを考えて無理をさせないのはわかる。だが、逆の視点から見ると、帰国後のペナントレースの再開が3月27日で日程が空くなど、今永の肩を十分に休息させる時間はある。日本のファンの多くは、SNSでこの采配を批判した。「今永交代は論外な采配」「 MLBの監督の中にも、某NPBの監督と同じくらい無能な人がいるのね」「なんで今永を交代させたの?」「交代が裏目に?」「マジでカブスが今永交代させたのが謎すぎる」「せめて5回まで投げさせるべきだった」 メジャーの考え方が、まだそこまで浸透していない日本野球の物差しで考えるとまったくの采配ミスだ。

日本だけではなく、米地元シカゴでも、この今永のノーヒット降板が話題となった。地元メディアも今永の降板にフォーカスした記事を掲載した。 シカゴの地元スポーツ放送局「マーキースポーツネットワーク」は「なぜ今永はカブスの敗戦で4イニングしか投げなかったのか?カウンセル監督によると」との見出しを取って、この問題について報じた。

「カブスファンはユニークなタイミングで開催された歴史的な東京シリーズでカウンセル監督の今永の起用法を目にすることになった。31歳の左腕はドジャース相手に4回無安打で69球を投げ、カブスが1-0とリードしているところで交代した。パフォーマンスと同様に日程が影響した。まだ3月中旬。今永、そしてこのシリーズで投げる残りの投手たちは、まだ7月や8月のような投球ができる準備が整っていない」

そう説明して前出のカウンセル監督のコメントを紹介した。 同局は「層の厚いドジャースのロースター陣は戦略的に今永に球数を投げさせた。今永は山本と投げ合うことで無失点に抑えることが重要なものになることが分かっていたため、ドジャースが与えてくるダメージを限定させようとし、結果として、今永のMLBの先発で過去最多となる四球数につながった。それが彼の投球数を積み上げることにもなった」とも記して、ドジャース打線の戦略と、今永の心理の駆け引きの結果、球数が増えて4回という早期降板につながったと分析した。

同じく米カブス専門サイト「ブリ―チャーネーション」も、この今永の交代問題を取り上げた。こちらは「わずか4イニングで今永を下げたことは理解できる」と物議を醸したカウンセル監督の采配を支持した。「(その起用法を)不安視するのはまだ早い。選手を無理に使うのは、まだ早すぎるという意味だ。この開幕戦は、普段よりも2週間早い。今永に、この試合でアドレナリンを加えた状態で、75球以上を投げさせることは、特に制球に問題を抱えていただけに完全に軽率な動きだろう」

一部では「75球、もう1イニングを投げさせるべきでは?」の意見もあったが、同サイトは、その危険性を訴えた。

「ブラウンは、長い5回を投げ、そして6回も続投した。カブスが今永からブラウンのセットでこの試合を計画していたのは明白だ。我々はそれがいいアイデアなのか、そうでないのかを議論することはできるが、そこに4イニング後に何であれ70球に近づいたために今永を降板させるという(当初のカウンセル監督の)アイデアに(今永の無安打投球という要素が)加わることになった」 同サイトはカウンセル監督のコメントを紹介しつつ「(カウンセル監督の)考えはシーズン全体を通し、現状の日程からベストのものだ。今永が5回にマウンドに登ったとして、その回を抑えられたかは分からない。状況をすべて考慮した上で70球に近づいた彼の降板に異議は唱えられない。今永も納得することのできる降板。議論はそれくらいにしておけないだろうか。結果は望んでいたものではなかったが、シーズンを考えたプロセスは理解できる」と主張した。

同記事には米カブスファンからのコメントが寄せられている。

「シーズン最初の典型的な過剰反応だ」とカウンセル監督の采配を批判するものもあったが、「この記事は書く必要がなかった。誰もが今日の先発が長い回にならないことを知っていた」「今永はローテーの中心選手として期待されている。一年を通して健康である必要がある」「交代を疑問に思っている人は誰かいるの?通常の開幕戦よりも2週間近く早いし、このシリーズの後に1週間以上休めるフルブルペンがいるんだ」などと、理解を示す意見が多かった。 ファンの反応にも日米の野球と同様に違いがあった。 今永は、「いいゲームをする、試合に勝つ、という2つのミッションのうち、ひとつはでき、ひとつはできなかった。アメリカに帰ってまたチャレンジしたい。ただストレートに関してはもの凄く手応えがあった。真っ直ぐの最低ラインを保っていれば、自信をもって投げられると勉強になった」と、前向きな発言。 メジャー1年目に15勝3敗、防御率2.91の好成績を残した今永の今季に2年目のジンクスの壁がなさそうなことだけは確かである。

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